2012 年 38 巻 4 号 p. 425-429
1997年から2007年までにがん研有明病院で一次治療を実施した舌癌293例を対象とし,stage I,IIにおける予防的頸部郭清の適応と,後発頸部リンパ節転移症例やN+症例における郭清範囲縮小の可能性について検討した。stage I,IIにおいて腫瘍の厚みが4mm以上では後発頸部リンパ節転移の頻度が35%であったのに対し,4mm未満では10%であった。また,予防郭清実施症例において病理学的リンパ節転移陽性症例は4mm以上の群で10%に認めたが,4mm未満の群では認めなかった。4mm以上の症例において予防郭清実施群,非実施群と比較し疾患特異的生存率に統計学的有意差は認めなかった。stage I,IIにおける後発頸部リンパ節転移症例,またN1症例においてlevel Vへの転移は認めなかったため,level Vの郭清省略の可能性が示唆された。