本研究では, 援助職, とりわけ心理職の発達・熟練の在り方について検討する上で比較対象となる資料を得ることを目的に, 小学校でボランティア活動に取り組んだ14名の大学生らが情報共有のために電子掲示板上に記した記録を, グラウンデッド・セオリー・アプローチ, 及び, 複線径路・等至性モデルを援用して分析した。その結果, 掲示板の継続的な記録・共有を通して, 学生が子どもたちと自身の関わりを振り返り記述する際の立ち位置(ポジション)が変容し, 視点が多様化することが明らかとなった。本研究では, これを「当事者ポジション」, 「観察者ポジション」, 「客観的ポジション」, 「俯瞰的ポジション」の4段階に分けて整理した。また, 援助職, 及び, 心理職養成における“専門的な教育・訓練の枠組みの外の実践活動”の意義を具体的に提示し, 今後, 発展させるべきポイントとして, “多様で複雑な事情に即応するためのバランス感覚”を提示した。一方で, 得られる体験は個人差が大きいことを明らかにし, 全ての学生の発達・熟練を促進するためには, 学生が互いに学び合える環境の整備に加え, 学生の個性や発達・熟練の程度に応じたサポートが重要であることを指摘した。