2016 年 49 巻 8 号 p. 714-720
高齢者潰瘍性大腸炎38例の術後排便機能を検討した.65歳以上を高齢者と定義し,65歳以上で手術適応のある症例のうち術前の排便機能が良好な症例に対して大腸全摘,回腸囊肛門管吻合術を施行した.最終診察時(中央値4.3年(1.0~11))の1日排便回数は6回,soilingを常時認める症例は5.3%で,spottingのみを常時認める症例は2.6%であった.各症例毎に術後3か月,6か月,1年,以後1年毎の経時的な1日排便回数の推移をみると,術後1年目までは減少する症例が多く,術後1年目以降では回数が不変な症例が最も多くを占めた.手術時年齢別にみると高齢化に伴う術後排便機能の低下はなかった.高齢者潰瘍性大腸炎に対する肛門温存術式は術前の排便機能が良好な症例に対しては術後機能も良好であり,手術適応のある症例に対しては至適手術と考えられた.