2009 年 42 巻 1 号 p. 25-30
心肺停止蘇生後に姑息的胃切除を行い神経学的異常を残さず救命しえた胃癌穿孔を経験した.81歳の男性で,食欲低下と体重減少,右側腹部痛,嘔気から経口摂取不能,意識障害となり緊急搬送された.病院到着12分後に心肺停止となり6分後に蘇生した.造影CTなどで腹腔内遊離ガス,胃幽門付近の壁不整像を認め消化管穿孔,腹膜炎,腹部コンパートメント症候群によるショックと判断した.初期輸液などの敗血症性ショックに対する治療と平行して,開腹減圧と感染源制御を目的に緊急手術とした.胃体下部前壁に胃癌漿膜浸潤と穿孔,腹膜全域に播種性小病変を認め,姑息的に幽門側胃切除,Roux-en-Y吻合を行った.腫瘍は,LCirc,type 3,pT3(SE),sN3,sH0,sP1,fStage IV,ly3,v2,INFβ,tub2>por2であった.術後は比較的容易に敗血症性ショックから離脱でき,神経学的異常の遺残はなかった.術後8か月の造影CTで腹腔内リンパ節,肝臓,肺転移を認め,術後14か月(第407病日)で死亡した.