症例は61 歳の男性で, 検診で異常を指摘され受診した. 上部消化管内視鏡検査にて, 胃体上部後壁にIIb型病変を認めた. 生検の結果, Group V (中分化型管状腺癌) と診断された. 超音波内視鏡検査では, びまん性に粘膜下層の数mm大の嚢胞状変化を認めた. 以上より, びまん性胃粘膜下異所腺に併存した早期胃癌と診断した. 患者の強い希望を受け, 手術は胃全摘術を施行した. 病理学的検索では, 粘膜下のびまん性異所性胃腺, 内視鏡的に認められた胃体上部後壁の癌病変に加え, 前庭部にも癌病変を認め, びまん性胃粘膜下異所腺に併存した多発早期胃癌と診断された.
びまん性胃粘膜下異所腺に合併した胃癌症例においては, 術前診断が困難な微小病変が存在する可能性があるため, そのことを念頭に置いた注意深い診断に加え, 多発胃癌, 残胃癌を考慮した治療法の選択と経過観察が必要であると考えられた.