日本消化器外科学会雑誌
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早期胃癌に対する縮小手術と内視鏡的粘膜切除術の問題点
多発早期胃癌における微小癌を中心に
荒井 邦佳北村 正次宮下 薫
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1992 年 25 巻 7 号 p. 1953-1957

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抄録

多発早期胃癌145例のうち微小癌 (最大径5mm以下の癌) を有する60例 (86病巣) を対象に臨床病理学的特徴を検討し, 早期胃癌に対する縮小手術 (limited operation;LOP) と内視鏡的粘膜切除術 (endoscopic mucosal resection;EMR) の問題点について考察した.多発早期胃癌と微小癌症例の頻度は, それぞれ早期胃癌の18.9%, 7.8%であり増加傾向にあった.微小癌の特徴はIIb (61.6%), tub1 (80.2%), 粘膜内癌 (m) が多く (98.8%), 占居部位ではM>A>C領域の順で, 主癌巣と同一か隣接した領域に多かった.主癌巣からの平均距離は, 長軸距離で4cm以内であった.主癌巣以外がすべて微小癌であった症例は35例にみられた.EMRの適応条件を満たす症例 (大きさ2cm未満, 深達度m) は9例存在し, これらを単発癌と誤認しEMRを行うと取り残しとなると考えられた.早期胃癌に対するLOPやEMRは, リンパ節転移の有無からだけではなく多発癌, 特に微小癌の存在を考慮し慎重に行う必要がある.

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