日本消化器外科学会雑誌
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原著
巨大食道裂孔ヘルニアに対する再発軽減を目指した腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術の工夫
瀧井 麻美子竹村 雅至多田 隆馬形部 憲山田 正法大嶋 勉眞弓 勝志田中 芳憲藤尾 長久
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2022 年 55 巻 10 号 p. 605-613

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抄録

目的:高齢化が進み,巨大食道裂孔ヘルニア症例への手術件数が増加しているが,高齢者特有の亀背や組織脆弱さによる再発が問題となっている.メッシュによる裂孔補強は再発の抑制効果があるとの一方で,メッシュ関連合併症の報告も増加しており,是非について一定の見解はない.このためメッシュを使用しない再発予防手技の工夫が望まれる.今回再発防止策の一つとして導入した胃固定術の有用性につき検討した.方法:2010年1月から2021年1月までに手術を行ったIII型・IV型食道裂孔ヘルニア88例を対象とし,患者背景,手術方法,術後成績など後方視的に検討した.結果:ヘルニア型はIII型が77例,IV型が11例であった.Upside down stomach症例は22例であった.噴門形成術はToupet法が66例,Nissen法が1例,lateral patch法が19例,他方法が2例であった.メッシュ使用症例は24例(27.3%)で,胃固定付加症例は61例(69.3%)であった.再発率は9.1%であったが,胃固定手技導入前後で再発率は18.2%から6.1%と低下した(P=0.006).また,胃固定のみ付加した症例とメッシュのみ付加した症例との再発率に有意差はなかった(P=0.441).結語:巨大食道裂孔ヘルニア修復術における胃体上部大彎前壁を連続縫合固定する胃固定術はメッシュと同等の再発防止手技になりうる可能性がある.

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