日本臨床細胞学会雑誌
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細胞異型の目立った成長ホルモン産生巨大下垂体腺腫の1例
松本 一仁池崎 福治宮本 誠一佐々木 幸雄八木橋 操六
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2000 年 39 巻 3 号 p. 199-203

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抄録

背景: 細胞異型が目立ち下垂体癌との鑑別が問題となった巨大下垂体腺腫の1例を経験したので報告する.
症例: 21歳女性.頭痛, 嘔気を主訴に入院, CT, MRI所見より下垂体腫瘍と診断され, 腫瘍切除術を受けた.手術時, トルコ鞍上に進展する境界明瞭な巨大な腫瘍を認めた.検査成績では成長ホルモン (GH) が22.9ng/mlと上昇していた.その他のホルモン値は正常範囲内であった.捺印細胞像では類円形~ 多稜形の腫瘍細胞が孤立散在性に出現, 裸核細胞も多かった.胞体はライトグリーン好性~ 淡染性, 核は類円形~ 不整形で大型核, 多形性を示し, 核小体も明瞭で1~2個みられ, 異型性もみられた.核内封入体もしばしば観察され, また多核細胞もみられた.核分裂像は認められなかった.手術組織での病理組織学的診断はびまん性増殖型の嫌色素性腺腫であった.免疫組織学的にchromogranin A, cytokeratinが陽性であった.GH染色では陽性細胞が散在し, 少顆粒型のGH細胞腫と考えられた.
結論: 本例では腫瘍細胞に異型性, 多形性が高度で, 細胞診上, 下垂体癌との鑑別が問題となったが, 核クロマチンの増量や核縁肥厚は目立たず, 核分裂像も観察されなかったことから腺腫と診断した.下垂体腺腫でも時にかなりの細胞異型を示す場合があるため, 診断に際しては臨床情報を十分参考にするとともに, 細胞増殖能にも注意を払う必要があると考えられた

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