1998 年 27 巻 2 号 p. 118-120
症例は25歳, 妊娠第38週の女性・左腰部痛を主訴に当院産婦人科を受診, 胎児心音微弱となり緊急帝王切開術が施行され, 後腹膜に血腫が認められたが軽度のため放置された. 術後, 腰部激痛をきたしショックに陥った. 腹部CT検査にて左腎動脈瘤破裂を疑い, 外科で緊急手術を行って, 腎動脈瘤破裂を確認した. しかし3分枝分岐部の瘤であり, 患者の全身状態も不良のため腎動脈再建は困難と判断, 左腎全摘術を行った. 母児ともに順調に経過した. 摘出標本にて, 瘤は周径27mmで下半周にわたり破裂していた. 病理組織では, 内弾性板は断裂し中膜の平滑筋線維は部分的に消失して線維芽細胞に置換されていた. 破裂性腎動脈瘤の予後は不良であり, 救命率向上のためには本症を念頭においた早期診断, 早期治療が必要と思われた.