AUDIOLOGY JAPAN
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原著
持続する蛋白尿と難聴のみを主症状としたミトコンドリア DNA 3243 変異症例
池ノ上 あゆみ永野 由起牛迫 泰明松田 圭二東野 哲也藤元 昭一
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2013 年 56 巻 6 号 p. 769-774

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抄録

要旨: 持続する蛋白尿の精査の過程で進行性感音難聴の存在からミトコンドリア DNA3243 変異の診断がついた一例を経験したので報告する。症例は33歳女性。15歳時より難聴, 蛋白尿を指摘され外来にて経過観察されていた。2009年10月, 腎生検目的のため当院内科に入院した。腎生検の結果, 一部に軽度のメサンギウム増殖を認め, 蛍光抗体法では, 係蹄とメサンギウム領域にIgAの顆粒状沈着を認めた。難聴に対する精査目的にて当科受診し, 右42.5dB・左28.8dB (4分法平均聴力レベル) の高音漸傾型の両感音難聴を認めたため, ミトコンドリア遺伝子検査を行ったところ, ミトコンドリア DNA3243 変異を認めた。後日, 電顕にて podocyte や尿細管上皮細胞に腫大した異常ミトコンドリアの集簇を認めた。IgA腎症を合併したミトコンドリア腎症・難聴と診断し, 現在ユビデカレノン投与下で経過観察中である。
感音難聴患者に原因不明の蛋白尿・腎機能異常を認める場合は, 糖尿病がなくともミトコンドリアDNA3243変異を疑い, 内科と連携した診断・治療を行うことが有効だと思われる。

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© 2013 日本聴覚医学会
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