日本環境感染学会誌
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原著論文
当院におけるMRSA感染制御活動の経済的評価に関する検討
鈴木 智之土屋 麻由美丹羽 隆渡邉 珠代太田 浩敏深尾 亜由美藤本 修平村上 啓雄
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2015 年 30 巻 2 号 p. 91-96

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抄録

  2006年から2009年の当院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する感染制御活動を,擦式アルコール製剤,手袋,プラスチックエプロンの使用量と経費および抗MRSA薬の使用量と医療費を用いて評価した.
  入院後48時間以後に採取された検体からMRSAが分離された新規院内感染例をMRSA症例と定義した.また,MRSAの感染に係る超過入院期間を14日と仮定して,超過入院費(想定値)を算出した.
  2009年のMRSA症例数は2006年と比して約100例(59%)減少し,関連する超過入院費(想定値)は2006年は約6,700万円,2009年は約2,700万円であった.それぞれの消耗品の使用量はMRSA症例数と負の相関を認め,標準予防策と手指衛生がMRSA症例数の減少に関連することが示唆された.2009年の消耗品経費は2006年と比して約5,800万円,患者1日当たりでは約330円増加し,MRSA症例を減少させるためには医療機関のある程度の経済的負担が必要であると考えた.また,感染制御活動に必要な消耗品経費は経年的に増加しているため,感染防止対策加算は医療経済的に効果的であることが推定できた.

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© 2015 一般社団法人 日本環境感染学会
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