日本透析医学会雑誌
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テルモ社製透析用人工血管 (TRE-687) の特徴とその臨床使用報告
太田 和夫辻 寧重久木田 和丘佐々木 茂酒井 信治渕之上 昌平中川 芳彦山田 和彦神應 裕原 修天野 泉内藤 秀宗田中 一誠沼田 明水口 潤中本 雅彦安藤 高志
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2003 年 36 巻 12 号 p. 1693-1699

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抄録

再シール性の高い材料を用いた新しい透析用人工血管 (以下, TRE-687: テルモ社製) が開発されたので, われわれはその有用性と安全性について検討した. 対象症例は, 1999年9月より2002年3月までにTRE-687を移植した慢性腎不全患者71名で, 男36名, 女35名, 年齢は31-88歳 (64.1±13.1歳: 平均値±標準偏差, 以下同様), 透析期間は0-31年7か月 (中央値3年9か月) であった. なお, 移植直前のブラッドアクセスは, 通常内シャント (動静脈瘻) 36例, 人工血管移植20例, 新規透析導入5例, 動脈表在化5例, カテーテル4例, およびヘマサイト1例であった. また, TRE-687の移植部位は前腕42例, 前腕から上腕にかけてが6例, 上腕13例, 大腿10例であった. 縫合のし易さは評価対象の71例中70例がePTFE製人工血管と同程度ないしはそれ以上であり, TRE-687縫合孔からの出血はなかった. ブラッドアクセスを移植した68例において, 初回穿刺日は移植日から平均9.8日後であり, そのうち54.4%が移植後7日以内の使用であった. 穿刺のし易さは対象 (292回) の約98%がePTFE製人工血管と同程度以上であり, 抜針後の平均止血時間は6.5±3.3分であった.
合併症は, 38例に55件発生したが, いずれもTRE-687との因果関係はなかった. 観察期間 (移植後12か月) 中, 処置の延べ回数は, 簡易的処置である経皮的血管形成術 (PTA) は57回, 血栓除去術49回, また, 部分置換, 吻合部の位置変更はそれぞれ8回, 9回であった. 12か月時の累積二次開存率は80.4%であった.
以上, TRE-687は, 1) 移植後早期の使用が可能であり, 2) 穿刺がし易く, 止血性にも優れており慢性腎不全患者のブラッドアクセスとして有用であることが確認された.

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© 社団法人 日本透析医学会
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