2005 年 108 巻 1 号 p. 27-30
我々は甲状舌管を伴わないオトガイ下部の異所性甲状腺癌を経験した. 症例は32歳男性でオトガイ下部腫瘤を主訴に受診した. オトガイ下部に可動性良好, 境界明瞭な腫瘤を触知し, 固有位置の甲状腺には異常を認めなかった. 腫瘤の穿刺吸引細胞診においてclass 4甲状腺乳頭癌の疑いであった. 腫瘍摘出術を行い, 病理組織は乳頭癌であった. 組織断端陽性であったため再手術ではSistrunk法を行った. 甲状舌管を伴わない異所性甲状腺癌は, われわれが渉猟し得た限りでは自験例を含め45例であり, そのほとんどは舌根部発生であり, オトガイ下部発生例は2例のみであった. 今回の症例の診断において穿刺吸引細胞診が有用であった.