日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
特発性大網捻転症の1例
齊藤 直人山崎 達雄花輪 峰夫小山 勇
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 65 巻 3 号 p. 810-813

詳細
抄録

特発性大網捻転症は急性腹症として発症し,術前診断が困難とされる比較的稀な疾患で,現在まで本邦報告例は自験例も含め61例である.今回われわれは術前に診断が困難であった特発性大網捻転症の1例を経験したので報告する.症例は48歳,男性.右下腹部痛を主訴に急性虫垂炎の診断にて近医より紹介受診した.右下腹部に腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査にて上腹部にhigh densityを伴った渦巻き状,層状のfat densityの腫瘤を認め,緊急開腹術を施行した.術中所見では淡血性の腹水を少量認め,反時計回りに5回転捻転し循環障害に陥った暗赤色の大網を認め,壊死部を含む大網を近位部にて切除した.特発性大網捻転症は急性虫垂炎と類似した症状を呈するため,その鑑別には,圧痛点が限局し痛みに比べ発熱と白血球の増加が軽度な症例に対し,本症も考慮に入れ腹部CT検査を行う必要があると思われた.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top