日本大腸肛門病学会雑誌
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総説
クローン病と下部消化管癌―本邦の現況―
篠崎 大
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2008 年 61 巻 7 号 p. 353-363

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抄録

クローン病では大腸癌·小腸癌のリスクが高く,近年,報告例が急増している.本邦報告110例を集積し大腸癌·小腸癌·瘻孔癌に分類した.これを欧米の症例と比較することにより癌合併例の特色を明らかにすることを目的とした.本邦では大腸癌報告例が小腸癌の約3倍であり,大腸のうち直腸癌が48%と多く,右側結腸癌が比較的少数だった.癌診断年齢は25∼89歳(中央値:46歳)であった.瘻孔癌では20歳代までにCDと診断され10年以上経過した症例が多いのに対し,大腸癌·小腸癌では40歳以上の比較的高齢で診断される例が多く,罹病期間によるリスクの差が小さかった.症状はクローン病の症状と大差なく,肉眼型では3型,4型,5型が多く,組織型では粘液癌の割合が高かった(31%).術前に癌の診断がついていた症例が6割程度と少なく,術後や剖検で診断された症例が32%と多かった.全体として進行癌が多く予後不良だった.

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© 2008 日本大腸肛門病学会

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