2007 年 60 巻 3 号 p. 136-141
2005年7月までに当科で手術を行った潰瘍性大腸炎 (以下UC) 症例755例のうち, 60歳以上の症例を高齢者と定義し, その臨床的特徴について検討した. 高齢者のUC手術症例は増加傾向にあり, 最近5年の症例では11.1%の症例が60歳以上であった. 手術術式は患者の術前の状態により多岐にわたっていた. 高齢者手術症例の予後を待機手術と緊急手術で比較検討すると, 緊急手術では15例中7人 (46.7%) が術後死亡しており, 予後は有意に不良であった. 死亡原因としては, MRSAや真菌感染に由来する呼吸器合併症や敗血症が多く見られた. 高齢者の重症UC症例は予備能力が小さく, 若年者に比べて予後は極めて不良であるため, このような患者の治療には, 消化器内科医と外科医が緊密な連絡を取りながら, 手術時期が遅れないようにすることが重要であることが示唆された.