日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 1882-0476
Print ISSN : 0916-4804
ISSN-L : 0916-4804
臨床検体よりSchizophyllum communeが分離された症例の検討
亀井 克彦海野 広道伊藤 純子西村 和子宮治 誠
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 40 巻 3 号 p. 175-181

詳細
抄録

近年,真正担子菌であるSchizophyllum commune(スエヒロタケ)による感染症の報告が目立って増加してきているが,その感染の実態は明らかでない.そこで,これまでに我々が関与した本菌の分離症例を臨床的および真菌学的に解析するとともに,海外の報告と比較検討した.まず原因菌の検出あるいは同定を目的として本センターに依頼のあった菌株を対象とし,通常の形態学的検討に加え,交配試験を適宜併用して同定を行った.次いで本菌が分離された症例に関し,患者のプロフィール,臨床経過などを総合的に検討した.血清中のIgG抗体は,S.communeから作成した抗原を用い,ELISA法にて判定した.その結果(1)依頼された真菌(および検体)の中で12例から本菌が検出された.(2)患者の約83%が女性で,また92%が40歳以上であった.(3)全症例の約83%でアレルギー性気管支肺真菌症ないしはmucoid impaction of bronchi様の病態を呈していた.(4)血清中の抗体は82%の患者に検出された.(5)分離された本菌の58%が,通常の形態学的手法では同定不可能な一核菌糸体であった.(6)海外で紹介された症例の検討では,13例(確実例は10例)の文献的報告があり,多くは副鼻腔病変であったが,わが国と異なり半数は侵襲性病変を呈していた.本菌による感染症の報告は世界的にも増加しつつあり,我が国でも今後,真菌症の病原菌として本菌を考慮する必要があると考えられた.

著者関連情報
© 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top