日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者胆管結石嵌頓症例の病像の検討
特に重症度について緊急治療例を中心に
有馬 範幸内山 敏行菱川 留王斎藤 雅文松尾 武文栗栖 茂梅木 雅彦喜多 泰文小山 隆司八田 建大藪 久則松田 昌三
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1993 年 30 巻 11 号 p. 964-968

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抄録

急性閉塞性化膿性胆管炎を含む胆管結石嵌頓による急性胆管炎は緊急治療を必要とする胆道感染症である. 当院では胆管結石嵌頓に対して積極的に緊急内視鏡治療を施行しているが今回は70歳以上の高齢者胆管結石嵌頓症例の病像を, 緊急治療例を中心に検討した.
1984年4月より1992年12月まで緊急治療を施行した胆管結石嵌頓症例は163例で, 緊急内視鏡治療例は126例, 緊急経皮経肝胆管ドレナージ治療例は23例であった. 緊急内視鏡治療例126例のうち重症例である急性閉塞性化膿性胆管炎の占める割合は69歳以下では46例中5例 (11%) であるが, 70歳から79歳まででは52例中14例 (27%), 特に80歳以上では28例中12例 (43%) と年齢別では高齢者になるほど高率に認められた. 症例数が少ないものの, 緊急経皮経肝胆管ドレナージ治療症例23例でも同様な傾向であった. さらにいわゆる Reynolds 5徴を呈する超重症の急性閉塞性化膿性胆管炎は緊急内視鏡治療例が6例, 緊急経皮経肝胆管ドレナージ治療例が1例であったが, 70歳以上が6例で, 特に80歳以上が5例を占めた. また死亡例は4例経験したが全例超重症の5徴症例であった. 年齢別では69歳以下では経験せず80歳以上が3例を占めた. つまり死亡率は69歳以下では0%であったが, 70歳から79歳まででは7.1%さらに80歳以上では12%と高齢老ほど高率であった. 高齢者の胆管結石嵌頓症は重症例が多く予後も不良であった.

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