日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
緩和期高齢癌患者への代替的癌治療―経口抗癌剤のメトロノミック療法の1例―
山下 和海鍋島 篤子近藤 浩子長尾 哲彦原 祐一成富 由司
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2009 年 46 巻 3 号 p. 264-268

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抄録

症例は82歳,女性.2004年3月,下血にて直腸癌と診断,5月上旬手術,人工肛門造設.ホリナートカルシウム/テガフール·ウラシル(UFT)内服の化学療法を受けたが,2006年12月に肺転移出現,水腎症合併,両下肢の痺れも出現したため,中断した.2007年3月下旬,癌末期の診断にて当院へ紹介.体調に応じた癌治療を希望された.治療は癌症状に対しては緩和医療にて対応し,癌腫の進行抑制に経口抗癌剤UFT週3Cap·シクロホスファミド(CPA)週1錠を4月中旬より開始.以後,投与量を調整し,同年12月永眠された.7カ月以上の経口摂取可能で,かつ体調の安定した期間を得,腫瘍マーカーの上昇も緩徐であった〔CEA:7.6→18.1,CA19-9:25.7→46.5,体重:27.0→24.5 kg〕.経口抗癌剤による癌休眠療法であるメトロノミック療法は腫瘍血管の新生阻害が主に期待されており,今回はUFTとCPAの併用を行ったが,副作用もなく安全に継続できたと考えた.緩和期高齢癌患者への代替的癌治療として,経口抗癌剤のメトロノミック療法の可能性が示唆された.

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© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
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