日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
総合病院における経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) 患者の長期予後と満足感調査
大西 丈二益田 雄一郎葛谷 雅文市川 正章橋爪 眞言井口 昭久
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2002 年 39 巻 6 号 p. 639-642

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抄録

経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) は管理が比較的容易で安全に栄養を与えることができる方法で, 近年広く行われるようになったが, 患者の長期予後やQOLに与える影響については十分に明らかになっていない. また高度痴呆患者に対して施行する場合, 誤嚥性肺炎を減少させ, 生命予後を改善するという確かな根拠が乏しいため, 適応は慎重にすべきであるという意見もあり, PEGの適応についてはまだ議論すべき問題が多い. 今回我々は, 安城更生病院で行われた連続78例のPEG患者の生命予後や家族の満足感などについて, 患者または家族に調査票を郵送することによって retrospective に調査した. このうち69例 (88%) より回答を得た結果, 1年後の生存率は64.0%であり, 2年後の生存率は55.5%であった. また「PEGを行ってよかったと思うか」という質問に対しては, 53%の家族が「はい」と答えた. PEG患者の生存率は, 本研究の結果はこれまで欧米で報告されてきたものに比べ良好な成績であったが, 対象患者, 治療内容や医療文化の相違などの要因が関与していることが考えられる. これらの要因を明らかにすることは今後の課題であるが, 高齢者でPEGを行う際には, 予後に関連する要因と, 見込まれる予後を検討した上で本人や家族の意向を十分に考慮し総合的に適応を判断すべきであろう.

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