日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
終末期のケアに関する外来高齢患者の意識調査
松下 哲稲松 孝思橋本 肇高橋 龍太郎高橋 忠雄森 真由美木田 厚瑞小沢 利男
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 36 巻 1 号 p. 45-51

詳細
抄録

外来通院患者について, 希望する終末場所, 不治の病で余命3カ月と仮定した場合の延命医療, 告知, 早期癌の場合の告知, 配偶者が終末期の場合に配偶者へ告知するかどうか, 脳が重度に障害され嚥下障害があり自分の意思を表明できない状態に陥った場合 (自己決定不能状態) の水分栄養補給, 痛み, 呼吸困難のケア, そのような場合に肺炎や出血, 腸閉塞が起こった場合の治療についてアンケート調査を行った. 562人, 73.4歳±8.6歳 (平均±標準偏差), 男女比1:1.7より回答を得た. 終末期での病名告知は60%が希望し, 病状の説明まで加えると78%に上った. 余命日数の告知希望率は53%に減少した. 早期がんで根治可能な場合の病名告知希望率は65%にとどまった. 配偶者が終末期にある場合, 配偶者への告知希望率は42%に低下した. 自分自身の告知の希望は高いが, 家族には告知しない態度が老人差別や偏見とならんで臨床の現場での告知率を下げていると思われる. 終末場所の希望は自宅64%, 病院24%であった. 終末の医療では, 自然の寿命に任せて欲しいは80%, 延命医療に徹するは9.3%であった. 自己決定不能状態になったときの水分栄養補給は経管栄養8.7% (胃ろう2.7%, 経鼻管6.0%), 点滴39%, 何もしないは42%で, 経管栄養の選択は延命医療と同じ程度に低い. 痛みのケアは麻薬使用40%で, 麻薬は中毒という恐れが強いため希望が低いと思われる. 終末期の輸血30%, 手術37%と実際行うことが少ないものの選択はかなりあるが, 酸素吸入56%, 抗生物質投与37%, 気管切開・人工呼吸器使用11%の選択を見ると, 自然にという意識が伺える. 緩和ケアの実際の認識は不充分だが, 終末期のケアに関して共通してみられる選択は病状の説明, 自宅で, 自然にであり, ケアの提供者はこの希望に沿った告知やケアの在り方を研究し, 情報を開示していくことが求められる.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top