1991 年 28 巻 6 号 p. 790-800
高齢者の適応状況を客観的に測定するため, 介護者による評価を用いた行動評価表を作成し, 4つの特別養護老人ホームにすむ280名の老人を対象として, 施設職員に行動評価を求め, 信頼性・妥当性の検討を行った. 信頼性は内的整合性, テスト-再テスト間の安定性, 評定者間の一致度から検討した. いずれの信頼性係数も非常に高く十分な信頼性を持つことが示された. また妥当性を検討するため, 身体状況, 生活状況, 知的能力と人格を含む19の外部変数と行動評価表の得点との相関を求めたところ, 総合的評価と5下位尺度 (ADL, 活動性, 対人関係, 痴呆, 問題行動) が老人の評定に有効であり, 老人の日常生活における行動から高齢者の適応状況を適切に測定することが示された. また, 総得点, 各下位尺度ともに年齢, 性別, 施設入所年数, 教育の諸変数と相関が低く, 本行動評価表がこれらの特性を考慮せずに使えることが示された.