2010 年 24 巻 6 号 p. 967-971
ヘリカルCTの普及により,肺の小結節病変が発見される症例が増え,診断のためのCTガイド下針生検や,手術に先んじたCTガイド下マーキングが行われる機会が増加した.一方で,これらの処置では肺穿刺に伴う重篤な合併症として空気塞栓症が広く認識されてきている.当科ではこれまで,CTガイド下針生検およびCTガイド下マーキングで各々1例ずつ,処置後の心腔内空気栓が発生した.1例目は56歳男性,左上葉肺癌の術後経過観察中に,右肺S6に肺癌が疑われる陰影が指摘され,CTガイド下針生検を施行した.2例目は75歳女性,扁桃癌の治療歴あり.右肺S9/10の肺転移巣に対し手術の予定となり,術前CTガイド下マーキングを施行した.2例とも,処置後のCTで心腔内空気栓が確認されたため,姿勢保持のまま経時的にCTを行い,その消失が確認された.重篤な空気塞栓症は回避できたが,肺穿刺の適応については熟慮が必要と考えられるため報告する.