膵臓
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症例報告
慢性膵炎に対する膵管空腸側々吻合術後30年以上経過し発生した膵癌の1例
田村 圭坂元 克考岩田 みく伊藤 千尋坂本 明優浦岡 未央永岡 智之船水 尚武小川 晃平高田 泰次
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2022 年 37 巻 6 号 p. 305-310

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抄録

慢性膵炎は膵癌発症の危険因子の一つであるが,慢性膵炎に対する外科治療は膵癌発生を減少させると報告されており,そのためか慢性膵炎に対する外科的治療後の膵癌の報告は少ない.患者は71歳,女性.40歳時に慢性膵炎に対して膵空腸側々吻合術を施行された.55歳時に糖尿病を診断され,以後定期通院中であった.71歳時にCEAの軽度上昇を指摘され,CT検査を施行.膵尾部に20mmの乏血性腫瘤を認め,精査の結果,膵尾部癌cT3N0M0,Stage IIAと診断された.術前化学療法後に膵体尾部切除術を施行.膵空腸側々吻合は膵体部から尾部にかけて施行されており,門脈直上に設定した膵切離ラインにはかかっていなかったため,膵空腸側々吻合部を含めて挙上空腸も切離した.切除病理結果で,吻合部浸潤を伴う膵癌の診断であった.慢性膵炎に対する根治治療後であっても,膵癌の発生に留意して長期的な経過観察が必要な可能性がある.

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© 2022 日本膵臓学会
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