2015 年 30 巻 4 号 p. 600-606
症例1は73歳,女性,膵嚢胞性病変を指摘され紹介された.CTにて膵頭部に45mm大の腫瘤性病変を認め,膵嚢胞性腫瘍を疑い幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理診断は膵粘液癌,T2N0M0 fStage IIであった.症例2は53歳,男性,検診の腹部超音波検査で膵尾部に嚢胞性病変を指摘され紹介された.CTにて膵尾部に47mm大の腫瘤性病変を認め,膵嚢胞性腫瘍を疑い膵体尾部脾合併切除を施行した.病理診断は膵粘液癌,T2N0M0 fStage IIであった.膵粘液癌は,その多くがIPMNを由来として発生することが知られているが,両症例とも術後病理はIPMNを伴わない,通常の浸潤性膵管癌の1亜型としての膵粘液癌であり,膵嚢胞性腫瘍が疑われたことで,EUS-FNAは施行されず,術前診断が困難であった.また,両症例に酷似する特徴的なEUS所見を認め,EUSが診断に有用である可能性が示唆された.