膵臓
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総説
膵管内乳頭粘液性腫瘍由来の浸潤性膵管癌
柳澤 昭夫
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2007 年 22 巻 5 号 p. 529-533

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抄録

膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary-mucinous neoplasms:IPMNs)は,1982年大橋らが主膵管内の多量の粘液貯留に起因する主膵管拡張と十二指腸乳頭口開大などの臨床的特徴を示す予後の良い膵癌として「粘液産生膵癌」と命名し報告して以来,四半世紀の25年が経過した.四半世紀過ぎたことにより"IPMNs由来の浸潤癌"も多く報告がなされており,これらの報告をもとに特徴をまとめると以下のようになる.平均年齢は65歳前後,性差は男性に多い.好発部位は頭部で,60%以上同部がしめる.浸潤部の組織型はほとんど(90%以上)が粘液癌と管状腺癌である.両者の比率はほぼ同様であり,通常の浸潤性膵管癌組織型における粘液癌のしめる頻度から考えると粘液癌の比率が非常に高い.予後は通常型の浸潤性膵管癌と比較して良い.特に粘液癌の予後は良い.以上が報告のまとめである.これらの結果は必ずしも厳密な"IPMNs由来の浸潤癌"の組織学的定義に基づいた報告の集積結果ではないが,いずれの国の報告も同様の結果であり"IPMNs由来の浸潤癌"の特徴を表しているものと考える.しかし,真のこの腫瘍の生物学的悪性度を知るためには,厳密な組織学的診断のもとでの症例集積によるさらなる分析が必要と考える.

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© 2007 日本膵臓学会
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