膵臓
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原著
急性膵炎の致命率と重症化要因
―急性膵炎臨床調査の解析―
大槻 眞伊藤 鉄英小泉 勝下瀬川 徹
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2005 年 20 巻 1 号 p. 17-30

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抄録

1995年1月1日から1998年12月31日までに発症した1,088症例における1,131回の厚生省研究班急性膵炎臨床調査票を再検討したところ, 重症度別では, 軽症38.5%, 中等症21.8%, 重症39.1%であった. 急性膵炎全体の致命率は5.9%であり, Stage2以上の重症急性膵炎の致命率は13.8%であった. 現在の重症度判定基準では, 判定に必要な臨床徴候と検査項目が多く複雑で, 重症度判定項目が全て記載されている調査票は少なく, 正確な重症度スコアによる比較検討は困難であった. 簡便にかつ正確に重症度を判定可能とするために, 重症度判定項目数の削減とCRPの追加などが必要であると考えられた. 急性膵炎による死亡67例中38例 (56.7%) は, 他院・他科からの転入例であった. 死亡例67例の急性膵炎発症48時間以内の最高重症度スコアの平均は9.8±0.7点であったが, 第3病日までの死亡例では重症度スコアは16.5±2.2点と最も高値で, 第57病日以降の死亡例では7.6±1.5点と最も低値であった. 急性膵炎治療開始14日以内の死亡は27例 (40.3%) で, 特発性膵炎に多く, 死因は心・循環不全, 呼吸不全, 腎不全を主とする多臓器不全であった. 一方, 15日以降の死亡は40例 (59.7%) で, アルコール性慢性膵炎が多く, 死因としては敗血症と播種性血管内凝固症候群を主とする多臓器不全であった. 死亡症例の輸液量を見ると第1病日では平均2,788±246mL (n=52, 平均値±標準誤差) であり, 1日の輸液量が3,500ml 未満の症例が78.9%を占めた. 急性膵炎発症早期の正確な重症度の判定と十分な輸液が重要であり, 重症と判定されれば早期に高次医療施設へ搬送すべきである.

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© 2005 日本膵臓学会
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