肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
縦隔に遠隔転移し胸腔内出血を来した肝細胞癌の1例
日野 一成大海 庸世古城 研二山本 亮輔古城 研二山本 晋一郎平野 寛
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 28 巻 10 号 p. 1383-1387

詳細
抄録

症例は71歳男性.肝細胞癌の治療入院中に誘因なく突然,右血胸をきたして死亡した.剖検で縦隔右側に直径5cmの転移性腫瘤が認められ,これが出血源と考えられた.肝細胞癌が縦隔に転移する率は3~6%といわれている.転移経路としては多くがリンパ行性とされており,本症例においても肝原発巣内のリンパ管と思われる脈管内に癌細胞が認められ,リンパ行性転移を裏づける証拠と考えられた.肝細胞癌における癌細胞からの出血は主要な死因の1つであり,肝細胞癌症例の20%は出血により死亡するとも言われている.しかし,そのほとんどは肝の癌腫が破裂して,直接に胸腔や腹腔に出血する形成をとるのであって,本症例の如く,肝と連続性のない転移巣からの出血は稀とされている.しかも縦隔転移巣から胸腔内出血を来した例は他に報告が見られず本邦初の報告例と思われる.

著者関連情報
© 社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top