2003 年 44 巻 12 号 p. 641-648
肝硬変に併発した菌血症症例について, 血液培養陰性例との比較を含めて検討した. 菌血症の頻度は, 延べ入院肝硬変患者数の2.3% (132/5854), 血液培養施行回数の40.5% (132/326) であり, 起炎菌としてはグラム陰性菌の割合が56.8% (79/139) と高かった. なお菌血症症例では, 血液培養陰性例と比較し有意に肝機能が不良であり, 1カ月以内の短期死亡率も49.5% (53/107) と有意に高率であった. また菌血症死亡例・血液培養陰性死亡例では, いずれも菌血症生存例より有意に肝機能が不良であり, 菌血症死亡例と血液培養陰性死亡例との比較では, 肝機能障害の程度に有意差は認めなかった. これらのことから, 肝硬変患者における菌血症の発症・短期予後については, 背景肝硬変の重症度が重要な因子になるものと推測された.