日本補綴歯科学会誌
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◆特集:日本補綴歯科学会第121回学術大会/イブニングセッション2「臨床イノベーションのための若手研究者の挑戦:補綴治療のための検査法の新たな展開」
超高齢社会における補綴治療を支える舌圧検査法
吉川 峰加
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2013 年 5 巻 2 号 p. 145-148

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抄録

歯科医療の最終目的の一つは摂食・嚥下機能の維持・回復であり,補綴治療はその手段となる.高齢者において,生命維持の観点から考えても,嚥下機能の口腔準備期・口腔期で大きな役割を担う舌を中心とする口腔機能が協調運動し,安全に経口摂取することはきわめて重要であり,歯科医師は歯科疾患の予防・治療に加えて,高齢者の低下しつつある口腔機能の維持・回復に対してもアプローチする必要がある.
われわれは1999年より簡易で広く応用可能な舌圧測定装置の開発を推進し(Hayashi et al.,2002),舌圧と食形態との関連性(津賀ら,2004),舌圧低下と嚥下障害との関連性(Yoshida, et al., 2006),20歳代以降の性別・世代ごとの舌圧標準値(Utanohara, et al., 2008),米国における舌圧測定装置と本装置との互換性(Yoshikawa et al., 2011),本装置による口腔周囲筋の圧力測定(Tsuga et al., 2011)などを報告してきた.本装置は歯科医師のみならず,歯科衛生士,言語聴覚士,看護師,介護福祉士など,高齢者ケアに関わる多くの職種で利用可能である.
今回は本装置を用いた最大舌圧の測定法はもとより,口唇や頬の圧力測定法や摂食・嚥下障害に対するリハビリテーションにおける有用性について紹介する.在宅治療のニーズも高まるなか,口腔機能を扱う唯一の領域である歯科が補綴治療による咀嚼・咬合の維持・回復に加えて,口腔機能の評価やリハビリテーションを行い,口から全身機能をサポートすることで,わが国の超高齢社会に大きく貢献できることをアピールしたい.

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© 2013 社団法人日本補綴歯科学会
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