日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:診療科の壁を越える共通語―IL-6を例として
抗 IL-6 受容体抗体による神経修復・炎症制御と神経再生
向野 雅彦中村 雅也岡田 誠司戸山 芳昭里宇 明元岡野 栄之
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2008 年 31 巻 2 号 p. 93-98

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抄録

  IL-6は中枢神経損傷において,その発生から回復に至るメカニズムの中で非常に重要な役割を担っていることが知られている.IL-6は炎症性サイトカインと呼ばれる一群に分類されており,組織の直接損傷から炎症の発生,それによる二次的な損傷の発生にいたるメカニズムへの関与が従来より知られてきたが,それに加え神経幹細胞や前駆細胞の分化誘導への関与を通じグリア瘢痕の形成を促進する働きを持つことが近年の研究で指摘されている.我々はマウス抗IL-6受容体抗体の投与によりこのIL-6シグナルをブロックすることが脊髄損傷後の炎症やグリア瘢痕の形成を抑制し機能回復を促進することを報告しており,ヒト抗IL-6受容体抗体が既に臨床応用されていることからも新たな治療のターゲットとしての期待が高まっている.一方でIL-6は神経保護的な性格も持ち,その完全な抑制は中枢神経損傷において損傷の拡大に働くことが報告されていることもあり,その臨床応用については病態と抗体の効果の背景にあるメカニズムについて十分な理解の下に検討される必要がある.

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© 2008 日本臨床免疫学会
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