日本臨床免疫学会会誌
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妊娠中に発症しネフローゼ症候群を呈した紫斑病性腎炎の1例
安川 香菜河野 通史大本 晃裕松山 隆治
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1996 年 19 巻 5 号 p. 505-511

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抄録

妊娠中に発症しネフローゼ症候群を呈した紫斑病腎炎の1例を経験したので報告する.
症例は33歳女性.妊娠5カ月時に両下肢に紫斑が出現し,皮膚生検にてleukocytoclastic vasculitisの所見を得た. 1カ月後ネフローゼ症候群を呈し入院した.経過より紫斑病性腎炎が疑われた.
妊娠中の治療としてヘパリンを用いた抗凝固療法を行い,蛋白尿減少,腎機能保持を計った.妊娠34週目に帝王切開にて2,020gの健全な女児を出産.出産後,腎生検を施行しInternational study of kidney disease in childhood (ISKDC)分類でGrade IIIの紫斑病性腎炎であった. Prednisolone 40mgとdipyridamole 300mgの投与を開始したところ尿蛋白は減少した.その後,ステロイドパルス療法も施行し, 2カ月後には尿蛋白は定性で陰性となった.姉もHenoch-Schonlein紫斑病の既往があり, HLAではDR 4とDQ 4を双方とも有していた.腎炎患者は妊娠中に,約50%に尿蛋白の増加がみられるといわれ,今回の尿蛋白増加には妊娠による負荷も否定できないと考えられた.

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