分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「空」:報文
大気中を風送される細菌叢の16S rDNA-クローンライブラリー解析
牧 輝弥福島 理英小林 史尚山田 丸長谷川 浩岩坂 泰信
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 62 巻 12 号 p. 1095-1104

詳細
抄録

近年,黄砂や汚染大気と挙動をともにするカビや細菌(黄砂バイオエアロゾル)にも強い関心が寄せられ,そのヒト健康や環境生態系への影響が危惧される.しかし,大気に含まれる微生物群を定性定量する十分な分析手法は確立されておらず,大気中での微生物の動態には不明な点が多い.本研究では,大型の黄砂が見られた2011年5月上旬に,石川県金沢大学のテラス(高度10 m)において,大気試料を採取し,16S rDNAクローン解析によって細菌種組成を調べ,蛍光顕微鏡観察を用いた直接計数法によって細菌細胞濃度を定量した.黄砂現象中盤では,Bacillus属の細菌種が優占し,黄砂発生地(タクラマカン砂漠)で検出された種と近縁になった.黄砂初期と終盤には,海洋に生息する細菌種が多く検出され,黄砂と混合した日本海の海水に起因すると推察できる.蛍光顕微鏡観察での計数では,細菌細胞濃度は黄砂時に100倍に増え,特に,黄砂発生時には海洋由来のグラム陰性細菌も風送され,全細菌数の40% を占めることが分かった.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
前の記事 次の記事
feedback
Top