順天堂医学
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原著
小児リンパ管腫105例の臨床的検討
--発生部位・病型別治療評価--
比企 さおり山高 篤行小林 弘幸岡田 安弘宮野 武
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2003 年 48 巻 4 号 p. 476-483

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抄録

目的: リンパ管腫は病理学的には良性腫瘍であるが, 浸潤性の発育を認め, 重要臓器を圧迫する例もあり, しばしば治療に難渋する. 本邦での治療法は, かつては外科的切除が中心であったが, 近年はブレオマイシンやOK-432の局注といった硬化療法を第一選択とする考え方に変遷してきた. 本症は頭頚部に好発するが, それ以外にもリンパ管の存在する全ての部位に発症しうる. しかし, 発生部位別にみた治療法の選択, またCysticやCavernousといった病型別の治療法選択について統一した見解は得られていない. これらを考慮し, 各々の発生部位や病型に適した, 効果的な治療方針を確立することを目的に, 自験例105例の比較検討を行った. 対象: 1979年から1999年の21年間に当科で経験したリンパ管腫109例中, 無治療で経過観察した4例を除く105例を対象とした. 方法: リンパ管腫を画像診断と病理標本に基づき独自に4病型に分類し, 外科的切除と硬化療法のそれぞれの治療成績および合併症の発生率を発生部位と病型別に検討した. 結果: (1) 外科的切除の有効率 (88.4%) は, 硬化療法 (69.4%) より高かったが, 合併症の頻度が硬化療法の約3倍であった. (2) 発生部位では54.3%を占める頭頚部領域の治療成績が全体の成績を左右し, 切除に伴う重篤な合併症も同部位に多かった. (3) 病型ではCysticの中でも比較的Cavernousに近いと考えられるMultiple Cystic typeの治療成績が低かった. 結論: 自験例における硬化療法の有効率は69.4%で, 他施設のこれまでの報告 (80-90%) ほどの有効性を認めなかった. 発生部位別では頭頚部, 病型別ではMultiple Cystic typeの治療方針の検討が必要と考えられた.

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© 2003 順天堂医学会
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